設立後3日目の仕事

グラビティの小平です。法人登記をしてから3日が経過しました。法務局の登記が完了するまで1~2週間待たなければならないので、まだ設立した実感がわきません。

さて、昨日と今日は2日連続で、とあるクライアント様の事務所を訪れているUKからのお客様への対応をしています。法人設立直後の最初の仕事が、世界最大の私企業の欧州支部から来日したマネージャーへの対応というのは、いかにも出来過ぎた話ですが事実です。

この会社の特徴としてまず感じたことは、これまでに私が見たどの企業よりも意思決定が早いです。ターゲットが絞られていて無駄がありません。社内の判断基準が確立されていて「ブレる」という言葉からは、最も遠いところにいる企業です。

ブレないのは確立したルーティンしかやってないからでしょ?と思う方もいらっしゃるかも知れません。ところがこの企業の場合は、全くそうではないのです。極めて短時間にとてもチャレンジングなことに取り組み難局を打開します。それをブレずにこなすのです。いや、むしろブレないからこなせるのかも知れません。

技術的な協議の途中、何度となく解決困難な課題が出ましたが、クライアント様サイドの技術者が思いも寄らない回答で、バンバン問題を解決して行ってしまう光景は圧巻でした。それも押しつけがましいところは何もなく、それでいて全力でお互いのためになる解決法を次々に提案してくるのです。もちろんクライアント様サイドの全員が人事を尽くし熱心に対応した姿勢も彼の心を打ったのか、彼もまたクライアント様を高く評価していましたが、とにかく私はこれまで彼のような人間を見たことがありません。

この人の会社は、付き合う企業、つまりサプライヤーを同志のように扱い、相手を高めようと最善を尽くすのです。あるいはその姿勢が彼らを巨大企業たらしめた要因のひとつなのかも知れません。

今回、この巨大企業にとって比較検討の対象になっていたサプライヤーの中には、私がお手伝いしているクライアント様企業の競合も含まれていました。どちらかといえば、その競合企業の方が業界では老舗です。ですが、なぜ最終的にはこちらに絞って協議するために来日してくれたのか。実はこの企業が求めていた技術は両社にありました。それでも、こちらを選んだのです。ではいったい何だったのか?

彼によれば、それは対応の迅速さと誠実さです。私はこの巨大企業からの問い合わせに対して、何のおべっかも使うことなく、他のお客様に接するのと同じように、求められたことを答え、必要な情報は質問し、そしてお客様の方式で直した方が良いと思われるところは率直に指摘しました。それを、極力相手を待たせることなく迅速に行っただけです。特別なことは何もありませんでした。

ただ一つ感じたのは、その率直な指摘出しをした直後のメールから、相手担当者、つまり今回来日したマネージャーの態度が急速に積極的に変わったことは、はっきりと記憶しています。

私と彼とのやりとりは、常にCCで8名の彼と同じ企業の方々に同時配信されていたので、誰かしかの評価が、その時点を境に積極的なものへと変わったのかも知れません。あるいは、それまでのメールは、こちらサイドとだけでなく、競合他社ともやり取りがなされていて、こちらの対応の姿勢は、常に比較されていたのかも知れません。もし私の対応が、そのような選択を彼らにもたらすきっかけとなったのなら、それはとても嬉しいことです。

来日後の対応は、逆に彼からの指摘出しに対して、どれだけ的を射た回答を迅速に提示できるかの戦いです。といっても、彼の方から数え切れないほどの助け船を出してもらえたので、苦しみながらも何とか乗り越えることができました。そして私の方も、クライアント様のメンバーと確認をしながら深夜まで議事録を作成し、夜はホテルで翻訳作業をして、翌朝には彼に対応の記録を投げ返しました。送信した30分後に「レポートの作成競争に負けたよ」と、スマイルマークと共に彼の側の報告書が添付されたメールが返ってくると、「ええ、私はお客様を負かす悪いサプライヤーですから」と、こちらも即応しました。

いずれにしても、この方とは、2日間という短期にしては考えられないような信頼関係を築くことができて、ジョークも言い合えてお互いの家族のことも話せるような間柄になれたことは、本当に私にとってはかけがえのない財産になりました。

さて、今回の協議の結果、私がお手伝いしているクライアント様の製品が採用されるかは、まだ分かりません。「結果については、感情や希望でなく、事実しか言わない」と明言してもらっているので、こちらも割り切って受け入れるしかありません。しかしここまで密度の濃い仕事をできたことは本当に幸せなことで、この仕事が与えてくれる出会いや成長につながり得る貴重な体験にも感謝をしたいと思います。

もしこの記事をここまで読んでくださった方がいたのなら、お分かりいただけるかと思いますが、私が貴重だと感じた経験は、接することができた企業のネームではなく、その中身です。その人がその企業を地で行く人なのかも分かりませんが、とにかく素晴らしい人に出会えたことを感謝したいと思います。