国際取引のリスクに向き合う

某大手国際企業からの注文書ですが、予定より随分かかって、ようやく今日発行されました。

機械の変更に伴う追加のCEマーク対応、EMC試験対応、輸出時の責任負担など、いくつかの点で詰めなければならないポイントがありました。

出荷時の責任負担については、こちらの希望は現地空港渡し、相手の希望はドアツードアで関税と消費税も売り主負担、インコタームズで言うところのDDPでした。

関税や消費税が売り主負担と言っても、その分は請求額に上乗せするんだから、どっちだって良いんじゃない?と思われる方もいるかも知れません。ところが、消費税が20%の欧州では、この税金分がなかなかの負担です。販売する機械や製品の代金次第では、税負担だけで数百万になる場合があります。

これを売り主が前払いし、到着後に製品にいちゃもんを付けられて踏み倒されでもしたら、かなりの痛手です。

今回は売り主の税負担がないDDU(またはDAP)で折り合いを付けることになりました。

こちら側が何も言わなければ、相手は自分に最も都合の良い条件を提示してくるのは自然なことです。こちら側も最も有利な条件で進めたいので、ここが綱引きになるのはごく普通のことですから、こちらも明確な態度を相手に示すことが大切です。

このクライアント様企業の場合、全取引を円建てで行っていて、為替リスクがないことは非常に大きなポイントです。英国のブレグジット、米国の政権交代など、保護主義台頭の影響もあって為替リスクは増大しているので、輸出による損失を最小に抑えるようにしなければなりません。

さて、注文書をもらった今でも、まだ手放しで喜べないのは、付随する契約条件がまだこちらに届いていないからです。理不尽な要求がないかどうかを素早くチェックしなければなりません。納品したらしたで何らかの対応を迫られる可能性がないわけではないので、結局はどこまで行っても、これで良しということはないのでしょう。

このように海外展開自体にはリスクは付きものですが、少子高齢化や国内市場の縮小などを加味して、それでも国際リスクを取らないことが果たして安全かというと、それはまた別の話になると思います。少しずつ、無理のない範囲で経験を積んでいき、対応力を増していくことは決してマイナスにはならないのではないでしょうか。

超巨大企業からの受注

本日、私がお手伝いさせていただいている僅か6名のクライアント様企業が、世界最大の株式非公開企業から仕事を受注しました。以下が決まった際のメールです。


本日中に注文書が御社へ送信されるでしょう。両社の契約条件が折り合えば、購入手続きに入ります。おめでとうございます。御社が勝ち残りました。


最初に問い合わせが入ったのが12月23日ですので、引き合いから受注まで、たったの1ヶ月です。うち、交渉が活発化したのは1月9日で、以降、毎日ほぼ5~6通のメールのやり取りがありました。全てのメールはおおよそ8名の顧客側スタッフにCCで配信されていて、うち、私が直接やり取りしたのは、異なる部門の3名です。

やり取りが本格化した直後から、いったい何なんだこのスピード感は!?という驚きがありました。時差を感じさせない怒濤の返信スピードです。

先日のブログにも書いたように、担当者が来日し、2日間の滞在期間に残していった指摘出しと解決の提案がスピーディーかつ的確であることに、さらに驚きました。そしてそれらは決して理不尽な要求でなく、良い意味での逃げ道や妥協案も提示してくれるのです。

指導を受けることが、明らかに会社の財産になるであろう内容です。今後の世界標準となり得る要求事項を無料で教えてもらえるのですから、コンサル料を払っても、ここまでの指導を受けられるチャンスはなかなかないかも知れません。

さて、ここからは実際の製作に絡むやり取りが納期まで続きます。非常にチャレンジングな取り組みになりますが、また担当の彼と渡り合えると思うと、とても楽しみです。

設立後3日目の仕事

グラビティの小平です。法人登記をしてから3日が経過しました。法務局の登記が完了するまで1~2週間待たなければならないので、まだ設立した実感がわきません。

さて、昨日と今日は2日連続で、とあるクライアント様の事務所を訪れているUKからのお客様への対応をしています。法人設立直後の最初の仕事が、世界最大の私企業の欧州支部から来日したマネージャーへの対応というのは、いかにも出来過ぎた話ですが事実です。

この会社の特徴としてまず感じたことは、これまでに私が見たどの企業よりも意思決定が早いです。ターゲットが絞られていて無駄がありません。社内の判断基準が確立されていて「ブレる」という言葉からは、最も遠いところにいる企業です。

ブレないのは確立したルーティンしかやってないからでしょ?と思う方もいらっしゃるかも知れません。ところがこの企業の場合は、全くそうではないのです。極めて短時間にとてもチャレンジングなことに取り組み難局を打開します。それをブレずにこなすのです。いや、むしろブレないからこなせるのかも知れません。

技術的な協議の途中、何度となく解決困難な課題が出ましたが、クライアント様サイドの技術者が思いも寄らない回答で、バンバン問題を解決して行ってしまう光景は圧巻でした。それも押しつけがましいところは何もなく、それでいて全力でお互いのためになる解決法を次々に提案してくるのです。もちろんクライアント様サイドの全員が人事を尽くし熱心に対応した姿勢も彼の心を打ったのか、彼もまたクライアント様を高く評価していましたが、とにかく私はこれまで彼のような人間を見たことがありません。

この人の会社は、付き合う企業、つまりサプライヤーを同志のように扱い、相手を高めようと最善を尽くすのです。あるいはその姿勢が彼らを巨大企業たらしめた要因のひとつなのかも知れません。

今回、この巨大企業にとって比較検討の対象になっていたサプライヤーの中には、私がお手伝いしているクライアント様企業の競合も含まれていました。どちらかといえば、その競合企業の方が業界では老舗です。ですが、なぜ最終的にはこちらに絞って協議するために来日してくれたのか。実はこの企業が求めていた技術は両社にありました。それでも、こちらを選んだのです。ではいったい何だったのか?

彼によれば、それは対応の迅速さと誠実さです。私はこの巨大企業からの問い合わせに対して、何のおべっかも使うことなく、他のお客様に接するのと同じように、求められたことを答え、必要な情報は質問し、そしてお客様の方式で直した方が良いと思われるところは率直に指摘しました。それを、極力相手を待たせることなく迅速に行っただけです。特別なことは何もありませんでした。

ただ一つ感じたのは、その率直な指摘出しをした直後のメールから、相手担当者、つまり今回来日したマネージャーの態度が急速に積極的に変わったことは、はっきりと記憶しています。

私と彼とのやりとりは、常にCCで8名の彼と同じ企業の方々に同時配信されていたので、誰かしかの評価が、その時点を境に積極的なものへと変わったのかも知れません。あるいは、それまでのメールは、こちらサイドとだけでなく、競合他社ともやり取りがなされていて、こちらの対応の姿勢は、常に比較されていたのかも知れません。もし私の対応が、そのような選択を彼らにもたらすきっかけとなったのなら、それはとても嬉しいことです。

来日後の対応は、逆に彼からの指摘出しに対して、どれだけ的を射た回答を迅速に提示できるかの戦いです。といっても、彼の方から数え切れないほどの助け船を出してもらえたので、苦しみながらも何とか乗り越えることができました。そして私の方も、クライアント様のメンバーと確認をしながら深夜まで議事録を作成し、夜はホテルで翻訳作業をして、翌朝には彼に対応の記録を投げ返しました。送信した30分後に「レポートの作成競争に負けたよ」と、スマイルマークと共に彼の側の報告書が添付されたメールが返ってくると、「ええ、私はお客様を負かす悪いサプライヤーですから」と、こちらも即応しました。

いずれにしても、この方とは、2日間という短期にしては考えられないような信頼関係を築くことができて、ジョークも言い合えてお互いの家族のことも話せるような間柄になれたことは、本当に私にとってはかけがえのない財産になりました。

さて、今回の協議の結果、私がお手伝いしているクライアント様の製品が採用されるかは、まだ分かりません。「結果については、感情や希望でなく、事実しか言わない」と明言してもらっているので、こちらも割り切って受け入れるしかありません。しかしここまで密度の濃い仕事をできたことは本当に幸せなことで、この仕事が与えてくれる出会いや成長につながり得る貴重な体験にも感謝をしたいと思います。

もしこの記事をここまで読んでくださった方がいたのなら、お分かりいただけるかと思いますが、私が貴重だと感じた経験は、接することができた企業のネームではなく、その中身です。その人がその企業を地で行く人なのかも分かりませんが、とにかく素晴らしい人に出会えたことを感謝したいと思います。